児童虐待のきっかけは?増加の背景を知って防止につなげよう
社会問題にもなっている児童虐待。
みなさんは、児童虐待で亡くなっている子どもたちがどれくらいいるのか、ご存知でしょうか?
厚生労働省の報告によると、死亡事例は年間50件を超えており、1週間に1人の子どもの尊い命が失われているのです。
今回は、児童虐待が起こってしまうきっかけや背景について考えていきたいと思います。
- 児童虐待のきっかけ、背景は?
- 児童虐待が発覚するきっかけは?
- 児童虐待にはどんな種類があるの?児童虐待の定義
- 平成30年度の虐待件数は?増加の原因とは
- 児童虐待を防止するには?対策方法とは
- 児童虐待防止法が改正され親の体罰が禁止に!
- ひとりで抱え込まずにSOSを出すことが児童虐待の防止につながる
児童虐待のきっかけ、背景は?
児童虐待をしてしまう親は、誰も虐待をしようと思ってしているわけではありません。不思議に思われるかもしれませんが、「虐待をしてしまうかもしれないという不安」「このままでは子どもを殺してしまうかもしれないという恐怖」と戦っている親がほとんどなのです。
また、精神的に追いつめられており虐待をしているという意識がないケースもあります。 児童虐待は悪であり親が非難されるのも当然のことですが、育児や家庭の悩みをひとりで抱え込み苦しんでいる親が多いのです。
だれも児童虐待をしようと思ってしているわけではありません。
では、児童虐待をしてしまうきっかけとは何でしょうか?
- 仕事や生活上のストレスや疲れ
- 子どもが障害、病気などで子育てに手間がかかる
- アルコールや薬物の依存
- 失業、片親などの経済的問題
- パートナーとの不仲
- 子どもの時に虐待を受けた経験があり子育てがよくわからない
- 育児のストレスや疲れ
- 地域や親族など頼れる人がいないことの孤独や社会からの孤立
このように児童虐待が起こる背景にはさまざまな要因があります。
きっかけはすぐそこにあり、子を持つ親は誰もが児童虐待のリスクを抱えているのです。 しかし、あくまでも児童虐待が起こりうるリスク要因なので、そういった環境であるからといって必ずしも被害者や加害者になるというわけではありません。
さまざまな要因が複雑に絡み合うことで、精神的に追いつめられやすくなり児童虐待につながってしまうリスクが上がります。
深刻な心理状態になると感情をコントロールすることが困難となり、子どもを愛していても傷つけてしまうという悲劇が起こってしまうのです。
児童虐待が発覚するきっかけは?
児童虐待が発覚するきっかけで、最も多いのが「通告」です。
2015年7月1日から児童相談所全国共通ダイヤル(189)によって、「虐待かも」と思ったら、誰でも通告・相談ができるようになりました。
匿名での通告・相談も可能なので、個人情報や内容についての秘密は守られます。
児童相談所全国共通ダイヤルについて|厚生労働省
児童虐待の解決のカギは、早期発見です。
子どもの泣き叫ぶ声や親の怒鳴り声が頻繁に聞こえる、子どもに不自然なケガや痣があるなど少しでも様子がおかしいと感じたら、周囲の人はすぐに児童相談所に通告・相談してください。
また、被害者である子ども自身が学校でスクールカウンセラーに相談して、児童虐待が発覚するケースもあります。
相談することはとても勇気がいりますが、誰かに助けを求めることはとても大切な選択ですね。
児童虐待にはどんな種類があるの?児童虐待の定義
児童虐待としつけの線引きはとても難しく、グレーな部分もあります。
子どもの成長を阻害してしまうほどの行き過ぎたしつけや教育は、虐待と捉えるべきでしょう。
厚生労働省では、以下のように児童虐待を大きく4つの種類で定義しています。
身体的虐待
殴る、蹴る、投げ落とす、激しく揺さぶる、やけどを負わせる、溺れさせる、首を絞める、縄などにより一室に拘束する など
身体的虐待は、周囲から分かりやすいので、児童虐待が明るみになるケースが多いです。しかし、衣類の下など目で確認できない部分にのみ暴力を振るうケースもあるので注意が必要でもあります。
性的虐待
子どもへの性的行為、性的行為を見せる、性器を触る又は触らせる、ポルノグラフィの被写体にする など
暴力や脅迫で口止めをされているケースや、被害者が相談しにくい問題でもあり顕在化しにくい虐待でしょう。
また、性的虐待を受ける年齢が早いと、性的虐待だと認識できないこともあります。
しかし、幼児時期からの性的虐待も発生しているので、周囲の人がよく注意してあげてください。
ネグレクト
家に閉じ込める、食事を与えない、ひどく不潔にする、自動車の中に放置する、重い病気になっても病院に連れて行かない など
ネグレクトは、乳幼児や小児など年齢の低い子どもが被害を受けやすいです。
体重や身長が標準よりも著しく低かったり、不潔であったり季節感のない身なりをしている、家に帰りたがらない、学校に行っていないなどが当てはまる子どもはネグレクトの可能性があります。
心理的虐待
言葉による脅し、無視、きょうだい間での差別的扱い、子どもの目の前で家族に対して暴力をふるう(ドメスティック・バイオレンス:DV) など
心理的虐待は、物理的な傷跡がないので定義が難しく、認知されにくい虐待でもあります。
しかし、親から言われた存在否定の言葉は子どもたちの心にずっと残り続け自尊心を壊してしまうので、注意が必要です。「生まれてこなければよかった」「殺してやる」などといった言葉の暴力や脅迫行為は、子どもたちの心を殺します。
心理的虐待の増加は目立っており、深刻な問題です。
児童虐待は、心理的虐待のみなど単独で起こるケースもありますが、暴力と暴言、性的暴行と脅迫などが複雑に絡まり合っているケースもあります。
引用元:児童虐待の定義と現状|厚生労働省
平成30年度の虐待件数は?増加の原因とは
厚生労働省の調査によると、
平成30年度中に、全国212か所の児童相談所が児童虐待相談として対応した件数は159,850件(速報値)で、これまでで最多の件数となっている。
児童虐待件数は、前年度より2万6072件も増えているのです。
増加の主な理由は、
・心理的虐待に係る相談対応件数の増加
・警察等からの通告の増加
だといいます。
調査を開始してから、児童虐待の相談件数は28年連続で増加しているそうです。
どうして児童虐待の相談件数は増え続けているのでしょうか?
その背景には、もちろん虐待について社会的意識が高まったことで、通告が増えたことが考えられます。
ですが、核家族化や経済的不安、地域からの孤立など社会的問題によって、児童虐待そのものが増えていることも事実でしょう。
引用:厚生労働省|子ども虐待による死亡事例等の検証結果等について(第15次報告)及び児童相談所での児童虐待相談対応件数
児童虐待を防止するには?対策方法とは
「児童虐待をしてしまったらどうしよう」「わが子を殺してしまうかもしれない」と不安を抱えている親は多いです。 親ができる児童虐待を起こさないための予防や対策には、どのようなものがあるのでしょうか?
児童虐待の防止策①:カウンセリングを受ける
児童虐待を予防するには、悩みを一人で抱え込まないことです。
カウンセリングを受けたり、地域の子育てひろばなどに参加して、話を聞いてもらいましょう。
自分の悩みを受け止め応援してくれる人がいることで、心の葛藤が軽減されだんだんと心に余裕が生まれてくるものです。
児童虐待の防止策②:子どもとの距離を一時的におく
育児に関心がなくなったり、カッとなって手を上げてしまったりなど、児童虐待の予兆がある場合は、一時的に育児から離れてみることも対策になります。
一時保育や託児所サービスを行っている保育所、自治体が運営しているファミリーサポートやベビーシッターなどを利用するのもよいでしょう。
児童虐待の防止策③:児童相談所に相談する
「子どもを傷つけてしまいそう」と感じたら児童相談所に相談してみましょう。
児童相談所全国共通ダイヤル(189)に電話すると、近くの児童相談所につなげてくれます。
また、東京都福祉保健局では、令和元年8月1日から児童虐待を防止するためのLINE相談を実施しています。
LINEだとより気軽に相談しやすいですよね。
児童虐待を防止するためのLINE相談「子ゴコロ・親ゴコロ相談@東京」 東京都福祉保健局
積極的に相談できる場所を探すことが、児童虐待の防止につながります。
児童虐待防止法が改正され親の体罰が禁止に!
ここ数年、虐待を受けて死亡した児童の事件が相次ぎ、胸を痛めている方も多いのではないでしょうか…。
国会では、児童相談所の不手際や関係機関との連携不足を受け、2019年6月に体制の強化や児童虐待防止法の改正が可決されました。施行されるのは、2020年4月からのようです。
改正法では、「親権者や児童福祉施設長による児童への体罰」が禁止となりました。
体罰の定義があいまいであり、罰則もないため実効性に欠けると不満の声も大きいようです。
しかし、親権者の方にとって、この改正法はしつけのあり方を見直すきっかけにもなるでしょう。
まだまだ改正法には課題点が多くありますが、「児童への体罰の禁止」という法律が抑止力になり児童虐待の防止につながることを祈ります。
厚生労働省の公式HPから、児童虐待に関する法令や指針の詳細を確認できます。
ひとりで抱え込まずにSOSを出すことが児童虐待の防止につながる
虐待はどんな理由やきっかけであろうと、あってはなりません。
児童虐待をしてしまう親の多くは、「真面目すぎる」ことも原因のひとつであるといわれています。
初めての育児で思い通りにならないことや育児の責任の重さで精神的に追い詰められてしまうこともあるでしょう。そんなときは、ひとりで悩みを抱え込まず周りの人の助けや専門機関の力を借りることも大切です。
また、周りの人もよその家庭のことだからと無視するのではなく、子どもとその親の未来のためにも児童虐待に気がついたら迷わず児童相談所に知らせてあげてくださいね。
児童虐待防止や子育て支援を行っているNPO法人日本ららばい協会では、子育て支援フォーラムや講演会、子守唄コンサートなどをおこなっているようです。
このような活動への参加は、児童虐待の現状や防止方法についてより深く考えるきっかけにもなるのではないでしょうか?