幼児虐待のきっかけは?虐待を受けている子供のサインとは

厚生労働省の調査では、平成30年度における児童相談所での児童虐待対応件数は159,850件、前年度より約26,000件増加しています。

参照:平成30年度の児童相談所での児童虐待相談対応件数(速報値)

 

こうした幼児児童虐待のきっかけは、1つではありません。

経済的要因であったり、環境的要因であったり、さまざまな要因が複雑に絡み合っているのです。

 

しかし、なぜ虐待にいたってしまうのでしょうか?

幼児虐待につながるきっかけはどこに潜んでいるのでしょうか。

 

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仕事や子育てのストレスは幼児虐待のきっかけになる

ストレス社会といわれている現代日本で、ストレスを全く感じないという人は少ないでしょう。

 

さらに、最近は共働きの家庭も増えてきました。

働きながら子供を育てる環境も珍しくありません。

職場でも大なり小なりストレスを抱えている人もいると思います。

 

仕事が終わってからはまっすぐ子供を迎えに行き、帰宅してからは家事に追われます。

幼児の場合は駄々をこねて困らせることも多く、夜泣きがひどい子だと満足に睡眠をとることも難しいです。

 

この状況下でワンオペ育児となっていたら、体力的にも精神的にもかなりの負担になることでしょう。

こうして積もったストレスのせいで、ギリギリの堤防が決壊するようにある日ふと自分を見失ってしまい、子供に手をあげてしまうということが多いです。

 

一度手をあげてしまったら止められず、それが日常的になってしまう人は少なくありません。

 

経済的な要因をきっかけに子供に虐待をしてしまう

身体的・精神的理由から働くことが困難であったり、失業してしまったりといった経済的な要因をきっかけに幼児虐待をしてしまうこともあります。

貧困や経済格差という問題は、虐待にも繋がるのです。

 

貧困は子供だけでなく親自身も衣食住を確保することが難しく、子供に満足に与えられないのは仕方のないことだと考えてしまい、親にも虐待に発展している意識がありません。

お金がないために、子供が怪我や病気になってしまっても治療費がないためそのまま放置してしまう人もいます。

処置が遅れれば命に関わることでも、放置してしまうのです。

 

また、シングルファザーやシングルマザーといった家庭も多く、十分な生活費を得られないことを理由に、幼児虐待へとなることもあります。

 

孤独感も幼児虐待のきっかけに挙げられる

頼れる親戚・友人や、近所付き合いが乏しいという孤独感から、子供に手をあげてしまうということもあります。

 

子供が生まれると、ママ友といった繋がりができます。

ママ友で相談できる相手が見つかれば、情報の共有やお互いに困った時には協力することが可能です。

 

しかし、ママ友というコミュニティーでうまく馴染めない人もいます。

馴染めないと自分が陰で何か言われているのではないかと疑心暗鬼に陥り、自分の殻にこもって人付き合いを拒否してしまうことがあります。

 

相談できる相手がいるということはそれだけで心強いものですが、そういう人が身近にいないと矛先が子供に向いてしまい、虐待に繋がってしまうのです。

 

望んでいない妊娠・出産からの回避感情もきっかけに

女性の場合、望まずに母親となってしまうこともないとは言い切れません。

 

人は誰しも受け入れたくない、つらい現実から目をそらそうとします。

これは人間の「防衛機制」といって、自分のことではないと思い込んで切り離そうとする行動の一つです。

 

妊娠・出産が母親にとって受け入れがたい現実だとしたら、「望んでいたわけではない」という回避感情をきっかけに、子供に愛情が持てず、育児放棄(ネグレクト)に発展するケースがあります。

 

虐待された経験は幼児虐待のきっかけになり得る

幼児・児童虐待をしてしまう人の中には、自分自身も虐待を受けたことのある経験がある人がいます。

そうした経験から、自分の子供にも同様に虐待をしてしまう傾向があるといいますが、実際にはそういった背景を把握するのが難しい状況です。

そして、虐待を受けた経験のある人が必ずしも親になって虐待をしてしまうとは限りません。

 

親自身の虐待された経験という情報はなかなか得られにくいですが、各市区町村の保健師ケースワーカーが把握している場合があります。

 

また、自分自身が受けてきたものが虐待ではなく、「しつけ」と勘違いしている人もいます。

厳しい体罰や叱責などを日常的に受けていた場合、「これはしつけだ」と思っているので、それが行き過ぎた行為だと認識できないのです。

 

そうなってしまっているとその人の考え方を変える必要がありますが、なかなか難しいといえるでしょう。

 

「しつけ」が発展して幼児虐待のきっかけに…

「しつけ」とは辞書には下記のように記されています。

《動詞「しつける」の連用形から。「躾」とも書く。「躾」は国字》礼儀作法をその人の身につくように教え込むこと。また、その礼儀作法。「家庭の仕付けがよい」「仕付けが厳しい」

出典・引用:デジタル大辞典

 

礼儀作法を身に着けさせることを「しつけ」と指すようです。

作用ができていない子供に対して、手をあげることもあるでしょう。

 

「なんで叩かれたのか」と手をあげたことに明確な理由があるなら、それは「しつけ」ととってもいいかもしれません。

しかし、むやみやたらに手をあげることは「しつけ」ではなく「虐待」になります。

 

「しつけ」で手をあげることが必ずしも悪いということではありませんが、それをきっかけに際限なく手をあげてしまうのは「虐待」といっていいでしょう。

 

幼児虐待はアルコール依存や薬物依存をきっかけに起こることもある

アルコール依存症や薬物依存症も幼児虐待のきっかけとなりえます。

 

アルコール依存症と幼児虐待

広義ではアルコール依存症も薬物(物質)依存症の一つです。

アルコール依存症の場合、アルコール摂取量が増加して、アルコールを手に入れるために時間を費やすようになります。

 

アルコールはコンビニエンスストアでも入手ができるため、親のアルコール依存症は幼児虐待のきっかけになりやすいです。

アルコール依存症をきっかけに暴力をふるう対象が配偶者であればDVになり、それを目撃する子供の心には大きなダメージを与えることとなります。

 

幼児虐待の例としては暴力・暴言といったものが挙げられます。

 

薬物依存症と幼児虐待

薬物(大麻覚せい剤、シンナー、ニコチン、向精神薬など)の依存症も社会的な問題となっています。

薬物の使用は家庭内で秘密裏に行われていることが多く、発見するのは困難です。

その入手経路から犯罪に巻き込まれる可能性も少なくありません。

 

薬物中毒状態であれば、妄想や幻覚・幻聴といった精神状態から正常な判断や攻撃性が強くなったりして虐待に繋がっていきます。

暴力だけとは限らず、性的虐待も多いことが薬物依存症の特徴です。

そして効果が切れた後にあらわれる離脱症状は、興奮や錯乱といった症状が出ます。

このようなときに殴る・蹴るといった幼児虐待を行う可能性が高いのです。

 

幼児虐待を受けている子供には特徴(サイン)がある

さまざまなきっかけで幼児虐待を受けている子供には、いくつかの特徴があります。

その特徴とは、どういったものなのでしょうか。

 

身なりに清潔感がない

古くてボロボロになった服を着ていたり、髪がボサボサだったりする子供は、虐待を受けている可能性があります。

満足に衣服を与えられていないだけでなく、お風呂にも入れてもらえないかもしれません。

 

さらに、体臭がする子供は育児放棄(ネグレクト)の可能性もあります。

 

同じ年頃の子供より痩せている

体格などは個人差があるにしても、同じ年頃の子供と比べて明らかに痩せこけている子供は虐待を受けていると思っていいでしょう。

十分な食事を与えられず、他の子より痩せてしまっているのです。

 

さらに、このような子供は食べ物に対して強く関心を示します。

食べ物に貪欲な子は注意した方がいいでしょう。

 

表情が乏しい

子供というのは表情がコロコロと変わり、喜怒哀楽もはっきりしています。

しかし、虐待を受けている子供は表情が乏しい傾向があります。

 

それは、虐待を受けた結果、感情を表に出すことが難しくなっているからです。

もしうまく笑ったり泣いたりできない場合には、何かあると疑った方がいいでしょう。

 

夏でも丈や裾の長い服を着ている

腕や脚が隠れるような丈・袖の長い服を着ている子供にも幼児虐待の可能性があるといえます。

体にできたアザや傷を隠すために着せられていることが多いからです。

 

しかし、これは日光アレルギー等の体質で袖・丈の長い衣服を着ている可能性もあるので一概に虐待されているとは言い切れません。

 

夜遅くに一人で外にいる

幼児虐待を受けている子供は、叩かれたりすることがわかっているので家に帰りたがりません。

また、育児放棄を受けている場合は子供への関心がないので注意されることもありません。

 

そのため、夜遅くまで公園で遊んでいたり、ゲームセンターやコンビニなどに行ったりする子供は注意が必要です。

 

おどおどした態度をとる

虐待を受けている子供は、常におびえています。

そのため、おどおどした態度をとることが多いです。

 

そうした子供は大人の行動にも敏感になっています。

例えば、腕をあげたり頭を撫でようとする仕草にびくっと身構えるようになるのです。

 

もちろん、突然のことで驚いて身構える場合もあるのですが、おどおどしている子は虐待を受けている可能性があります。

 

幼児虐待は親だけを悪者扱いしてはいけない

幼児虐待は、親が加害者で子供は被害者です。

これはどうやっても覆せるものではありません。

 

しかし、虐待をしてしまう親の中には苦しんでいる人もいます。

周囲にSOSを出せず、ため込んでしまった結果、虐待に繋がる人も少なくありません。

自分がなぜ子供に手をあげてしまうのか、わからなくなってしまっている人もいるのです。

 

誰しも幼児虐待の加害者になる可能性は十分あります。

加害者になってしまった親を悪者扱いしてしまっては、一層追い詰められてしまって精神的にも良くありません。

 

もし、周りに虐待の可能性を感じたら児童相談所などにまず相談しましょう。

そして虐待をしてしまったからといって責めるのではなく、話を聞いてあげましょう。

 

子育て支援を幼児虐待防止のきっかけに

NPO法人日本ららばい協会 では子守唄に関する情報や楽曲の収集とした事業だけでなく、子育て支援や虐待防止の取り組みも行っているそうです。
定期的な子育てフォーラムや講演会、子守唄コンサートなどを通じ、子育てで悩む親御さんたちのサポートや虐待の防止に尽力を注いでいるとのこと。

子育てには正解などなく、自分の思い描いていた通りに子育てが進まないことが原因で虐待親となってしまうケースもたくさんあります。
まずは深呼吸をして、悩んだらNPO法人日本ららばい協会でおこなっているような子育て支援イベントに参加してみてはいかがでしょうか。